2005年09月05日
師匠のことば【天狗になるな!】
師匠に日本舞踊を習い始めてから、何度も言われてきたこと
ばです。
「天狗になるな!」
「上には上がいる、と常に自覚しなさい。」
このことばがあったおかげで、何度のスランプを切り抜けら
れてきたことだろう。
時に湧き上がってくる慢心って奴は、本当に情け容赦ない。
攻撃の手を緩めない。
ほんの少し、他人様に褒められてみたりすると、すぐに増殖
を繰り返し、巨大な力になって、私を包み込んでしまう。
・・・って、私、とってもおだてられやすい、お調子モノっ
てだけなんですけどね・・・(汗)
でも今思い返しても、いろんなことが上手くいかないとき、
この「天狗」っていう慢心が、心を蝕んでいるケースって、
驚くほど多い気がしています。
■ビジネス上のいさかい
■友達との人間関係
■家庭内の会話
・・・などなど。
自分を意味無く卑下していくことも、自分の精神を傷つけて
いくだけで良くないとは思いますが、その逆の自分に対する
「慢心」という魔物も、扱いづらいですね。
例えば、普段サラリーマンとして仕事をしていても、
・自分の方が、その仕事に習熟しているはず。
・自分の方が、その仕事をもっと上手くやり遂げられるはず。
と思って事にあたっていると、常にそれは、他人に対する比
較優位で自分を”上”に位置づけていますから、他人を見下
してしまう態度が、どうしても相手にも伝わってしまいます。
・・・結果は明白ですね。ビジネス上の人間関係であるとは
いえ、相手との人間関係は、
・相手と比較して、自分の方が上。
・自分の言うことの方が、正しいに違いない。
という傲慢な態度が災いして、間違いなく上手くいかなくな
ってしまいます。
そして、仕事の結果も惨憺たるものになってしまうかもしれ
ません。
一見言い古されたことばではあるのかもしれませんが、人間
関係において、これほど役に立つことばは、無いのかもしれ
ません。
「天狗になるな!」
「上には上がいると、常に自覚しなさい!」
・・・っはいっ!師匠!
心に刻みます!
【今に集中する】の効用
観客の皆様に、ひと手先を見越されてしまうだけで、
舞踊家はその価値を半減させてしまうのかもしれません。
ひと手先とは、
次のストーリー展開を意味していますので、
だれも先の分かっている映画を見たいと思いませんよね。
何度見てもいい!という名作であって、それを何度も見ている人
でも、その先のストーリーを、ひとつひとつ頭の中で先回りしな
がら見ている、
ということは、ないのではないでしょうか。
もし、そうだとしたら、見ているだけで疲れてしまうのではない
でしょうか。
逆に言うと、何度も見てしまうような名作映画を繰り返してみる
とき、その名作映画は、たとえ何度見ても、その次のストーリー
を考えさせることなく、今のシーンに見ている人を釘付けにする
力があるからこそ、名作と呼ばれるようになった、と言える様な
気がします。
言い換えれば、演技者や演出者が【今に集中している】と言える
のではないでしょうか!?
私も舞踊家として、現在もこれからも、【今に集中】して、決し
て先の見えない・見せない、ワクワクさせる、感動ストーリーを
紡ぎだしていきたいと思います。
師匠のことば
「あなたは、十分にお稽古を積んできましたよ。」
「あとは、自信をもって、やりなさい。」
私にとっての大舞台「長唄 鷺娘」の前夜、師匠がそう言ってくれました。
何よりも心強い支えとなりました。
・
・
・
その日、翌日の舞台のためのリハーサルが行われました。
演者以外の問題も、少々発生していました。でもそれは、プロの裏方さんが、
明日には間違いなく修正いただける範囲のものでした。
少々の戸惑いはありました。
それにしても、その日、私の踊った鷺娘は、とてもひどい出来でした。
「十二分とは言わないけれど、それなりにお稽古は積んできたはずなの
に・・・、なんでこんなに上手くいかないんだっ???」
そのくらいひどい出来でした。
そうなると、もう歯止めはききません。
私の心は、堂々巡り、抜け出せないメビウスの輪の中で、もがき苦しみ始めま
したで。
「この舞台を通して、こんなメッセージを観客に伝えたい。」
「できれば、感動を差し上げたい。」
なんて、だいそれたこと考えてた自分は、なんて大ばか者だったんだ!
こんなんじゃ、ろくにひとつの舞台を全うすることなんて、できやしない!
何とかしたい・・・でも今さら、何にもできやしない。
時間がなさ過ぎるよっ!
・・・どうしたら、いいんだぁ〜!
なんでもっと、お稽古しなかったんだろう。
なんでもっと、いろいろな事態を想定しておかなかったんだろう。
なんでもっと、真剣に考えておかなかったんだろう。
なんでもっと・・・なんでもっと・・・なんでもっと・・・。
自分で、どんどん自分を責め上げていきました。
そうすると、どんどん自分が苦しくなって・・・。
・・・表面上は平静を装っていたつもりでしたが、完全にパニックに陥ってい
ました。
・・・その夜、師匠に電話しました。師匠は所要で、リハーサルには立ち会え
ていただけなかったんですが、師匠の娘さん(この方も、日本舞踊のお師匠さ
んです。)が、立ち会っていただいていました。
私 :「こんばんわ。」
師匠:「あっ、お疲れ様〜。今日のリハーサルは色々たいへんだったよう
で。聞きましたよ。」
私 :「え〜、ちょっとパニックです。」
師匠:「問題は、心配しなくても大丈夫よ。プロの裏方さんは、間違いなく、
明日には間に合うから。」
私 :「え〜、でも・・・」
その少しのやりとりだけで、師匠は、私の心の葛藤・戸惑い、いろいろと入り
混じった感情を、敏感に感じ取っていただいたようでした。
そして、その気持ちのままでは、明日の本番に向かっていけない状態であるこ
とも、一瞬でつかみとっていただいたようでした。
私の声は、そんな情けない感情を、師匠にぶつけてしまったようでした。
師匠:「あなたは、十分にお稽古を積んできましたよ。
あとは、自信をもって、やりなさい。」
私 :「・・・」
師匠:「大丈夫。ほんとうにここまで、十分にやってきたんだから。」
私 :「ありがとうございます!」
師匠のことばが、こころに染み入ってきました。
自分で自分を責め上げる、荒んだ気持ちに、すっ〜と、染み入ってきました。
何ともいえない、大きな安心感が、私のこころを包み込んでくれました。
あったかい、あったかい気持ちになれました。
私 :「ありがとうございます。そのように言っていただけると、なんだか
本当に、大丈夫な気がしてきちゃいました♪
十分だったかどうか分かりませんが、とにかく頑張れます。
頑張ります。」
そう言いながら、師匠にマンツーマンで、手取り足取り指導いただいた、たく
さんの瞬間たちを、思い出していました。
そうだ。十分かどうかは、分からないけど、たくさんのお稽古の瞬間は、確か
にあったし、今、私の胸の中に、その瞬間たちは生きている。
一瞬一瞬の大切な時間たちは、間違いなく、私の中にある!
そう確信できました。
まさに、その瞬間、自分を責め上げる気持ちは、自分を応援する気持ちに変わ
りました。そう、一瞬の出来事でした。
師匠:「あなたは、十分にお稽古を積んできましたよ。
あとは、自信をもって、やりなさい。」
師匠は、もういちど、そしてとても慎重に、ことばが私に伝わったかを確認す
るかのように、言ってくださいました。
そして、師匠のことばは、私のこころのど真ん中に、伝わりました。
あったか〜いことばでした。
私 :「ありがとうございました。おやすみなさい。」
あったかい気持ちで、電話を切りました。
師匠に弟子としていただいて26年間、私は本当に学びの少なかった弟子でし
た。
いつも師匠に確認していただかないと、不安でした。
いつも師匠のことばの中に浸っていないと、不安でした。
もういい加減、年齢的にも、少しくらいは学んで、自分のコントロールなんて、
自分でできるぞっ、なんて思ってみたりしてました。
でも、いざというときになったら、全然出来ませんでした。
本当に自分が自分で情けなるくらい、自分を立て直せませんでした。
自分では、何も出来ませんでした。
そして、今回もまた結局、師匠に頼りきってしまいました。
本当に修行が足りません。
師匠、申し訳ありません。そして、最大級の感謝です。
ありがとうございます。
・・・精進します。
これからもよろしくお願いします♪